【健康の格言#090】痛いは居たい?

「痛い」という言葉が痛みを長引かせる理由

言葉が痛みに影響する理由

痛いとき、思わず「痛い、痛い」と口に出してしまうことはありませんか?

実はその言葉が、痛みを長引かせているかもしれないんです。

これは感覚的な話ではありません。神経科学的な根拠がある話です。

理学療法士として37年間、25万回以上の施術を行ってきた中で確信していることがあります。言葉の使い方が体の回復速度に大きく影響しているということです。

言語処理と痛み認知の神経学的メカニズム

脳は言語情報を処理するときに感情や身体感覚と関連する領域を同時に活性化させます。

「痛い」という言葉を繰り返し口にすると前帯状皮質・島皮質・扁桃体という痛みの情動的側面を処理する領域が活性化します。これらの領域は実際の痛み刺激を受けたときと類似したパターンで活動することが神経画像研究で明らかになっています。

つまり「痛い」という言葉を繰り返すことで実際の痛み刺激がなくても脳が痛みに関連した状態を作り出してしまうことがあるんです。

長期増強と痛みの慢性化

繰り返される刺激によって神経間のシナプス結合が強化される現象を長期増強といいます。

「痛い」という言葉を繰り返すことで痛みに関連する神経回路の長期増強が促進されます。これにより同じ刺激に対してより強く反応するようになります。さらに通常では痛みとして感知されないような弱い刺激でも痛みとして認識されるようになります。

これが慢性疼痛における中枢性感作の一側面です。言語を通じた痛みの強化は慢性疼痛の維持に関与している可能性があります。

言葉と内因性鎮痛システムの関係

逆に前向きな言葉が痛みの緩和に影響することも研究で示されています。

「だいぶ楽になってきた」「少しずつ良くなっている」といった前向きな言葉を使うとき脳はエンドルフィンやエンケファリンといった内因性オピオイドの分泌を促進します。

内因性オピオイドは体内で産生される天然の鎮痛物質です。オピオイド受容体に結合することで痛みの信号伝達を抑制して痛みの感覚を和らげます。

さらに前向きな言葉はセロトニンやドーパミンといった神経伝達物質の分泌にも影響します。これらの物質は気分の改善だけでなく痛みの閾値の上昇にも寄与します。

行動を伴わせることの重要性

ただし誤解しないでください。痛みを感じているのに「全然痛くない」と無理に言い聞かせることを推奨しているわけではありません。

重要なのは言葉と行動を組み合わせることです。

何も行動せずに「痛い、痛い」と言い続けるだけでは脳はその場所に居たいというプログラムを強化してしまいます。一方で痛みをなんとかしようと行動しながら「少しずつ良くなっている」と言葉にすると脳は回復に向けたプログラムを動かし始めます。

この違いは自己効力感という概念と関連しています。自己効力感とは自分がある状況において適切な行動を遂行できるという信念です。行動を伴った前向きな言葉は自己効力感を高めて痛みへの対処行動を促進します。

プラセボ効果と言語の関係

プラセボ効果の研究から言語が痛みに与える影響が明らかになっています。

プラセボ(偽薬)が効果を発揮するメカニズムの一つに言語的暗示があります。「これを飲むと痛みが和らぎます」という言葉だけでエンドルフィンの分泌が促進されて実際に痛みが緩和されることが研究で示されています。

これはナルトレキソンというオピオイド拮抗薬を投与するとプラセボ効果が消失することで確認されています。言語的な暗示が内因性オピオイドシステムを介して実際の鎮痛効果をもたらしているんです。

この原理を応用すると日常的に使う言葉が自己暗示として機能して痛みの認知に影響することが理解できます。

実践的な言葉の使い方

以下の言葉を意識的に日常に取り入れてみてください。

「だいぶ楽になってきた」という言葉は回復の進行を肯定します。実際に改善が感じられなくても体がより良い方向に動いているという信念を脳に伝えます。

「少しずつ良くなっている」という言葉は段階的な回復を受け入れる言葉です。完全な回復を求めるのではなく小さな改善を積み重ねるという脳へのプログラムになります。

「今日はここまでできた」という言葉は行動の達成を認める言葉です。自己効力感を高めて次の行動へのモチベーションを維持します。

当院のアプローチ

おんおんどうでは施術と並行して言葉と思考パターンが痛みの慢性化に与える影響についてお伝えしています。

特に長年の慢性痛を抱えている方の多くに共通しているのが痛みに対する否定的な言語パターンです。「もう治らない」「一生この痛みと付き合っていくしかない」こういった言葉を繰り返すことで中枢性感作が維持されて慢性疼痛が固定化されていきます。

施術で筋肉の緊張を緩めながら前向きな言葉と行動を組み合わせることで慢性疼痛の根本的な改善を目指しています。

まとめ

「痛い」という言葉を繰り返すことで痛みに関連する神経回路の長期増強が促進されて痛みがより強く感知されやすくなる。

前向きな言葉はエンドルフィンなどの内因性鎮痛物質の分泌を促進して痛みの閾値を高める効果がある。

言葉と行動を組み合わせることで自己効力感が高まり脳が回復に向けたプログラムを動かし始める。

何も行動せずに痛みを訴え続けることは中枢性感作を維持して慢性疼痛の固定化につながる可能性がある。

「だいぶ楽になってきた」「少しずつ良くなっている」という言葉を意識的に使うことが体の回復力を高める第一歩になる。

言葉は脳へのプログラムです。今日から使う言葉を少し変えてみてください。

鹿児島の整体おんおんどう
理学療法士 迫田徳昭
施術歴37年・施術実績25万回
鹿児島市小野3-2-7
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