【#111健康の格言】『痛みをガマンしながら…』やるのはNG

111痛みを我慢しながらやるのはNG

痛みをガマンすることが危険な理由

仕事中に痛みをガマンしながら作業を続けていませんか。

多くの方が忙しいから、自分がやらなければならないから、という理由で痛みを無視して作業を続けます。

しかしこれは体の重要な警告システムを無視している行為です。

 

理学療法士として37年間、25万回以上の施術を行ってきた中で確信していることがあります

。痛みを無視し続けた方ほど回復に時間がかかります。

気づいたときに対処した方ほど回復が早い。

 

これは数え切れないほどの症例から得た確実な観察です。

 

痛みの生理学的メカニズム

痛みがなぜ生じるのかを生理学的に説明します。

侵害受容器の活性化があります。

皮膚・筋肉・関節・内臓などの組織には侵害受容器と呼ばれる,

痛みを感知するセンサーが分布しています。

侵害受容器は機械的刺激・熱刺激・化学的刺激によって活性化されます。

 

活性化された侵害受容器からのシグナルは,

Aδ線維とC線維を通じて脊髄後角に伝達されます。

 

Aδ線維は鋭い一次痛を、

C線維はじわじわとした二次痛を伝えます。

 

脊髄後角での処理があります。

脊髄後角では痛みのシグナルが処理されて上位中枢である脳へと伝達されます。

この過程でグルタミン酸やサブスタンスPなどの神経伝達物質が放出されます。

 

脳での認識があります。

視床を経由して大脳皮質体性感覚野・前帯状皮質・島皮質などの複数の脳領域が活性化されて,

痛みとして認識されます。

 

つまり痛みは組織に問題が生じていることを,

脳に伝えるための重要なシグナルシステムです。

 

体が「ここに問題がある。これ以上続けないで」と伝えているメッセージなんです。

 

痛みを無視し続けると起きる中枢性感作

痛みのシグナルを無視して同じ動作を続けることで,

脊髄後角において中枢性感作という現象が起きます。

 

中枢性感作とは,痛みを処理する神経回路が過敏化することで,

本来は痛みとして感知されないような弱い刺激にも痛みを感じるようになる状態です。

 

中枢性感作が起きるメカニズムを説明します。

 

NMDA受容体の活性化があります。

繰り返し痛みのシグナルが入力されると脊髄後角のNMDA受容体が活性化されます。

NMDA受容体が活性化されると神経細胞の興奮性が高まります。

 

ウインドアップ現象があります。

繰り返しの侵害刺激によって脊髄後角ニューロンの応答が増大していく現象です。

最初は軽い痛みだったものが繰り返すことでどんどん強く感じるようになります。

 

グリア細胞の活性化もあります。

ミクログリアやアストロサイトなどのグリア細胞が活性化されて炎症性サイトカインを放出します。

これがさらに神経の過敏化を促進します。

 

この中枢性感作が慢性疼痛への移行の鍵となるメカニズムです。

急性の痛みを無視して同じ刺激を繰り返し与え続けることで,

慢性疼痛に移行するリスクが高まります。

 

赤信号の比喩が示すもの

痛みをガマンして続けることは,

赤信号を無視して渡り続けるようなものだという比喩には深い意味があります。

 

赤信号は危険を知らせるシステムです。

最初は無視しても何も起きないかもしれません。

しかし続けることで事故のリスクが累積していきます。

 

体も同じです。

最初は軽い痛みを無視しても急性の症状は出ないかもしれません。

しかし前述の中枢性感作のメカニズムによって神経系が徐々に過敏化していきます。

 

ある時点で些細な動作が引き金となって強い痛みが生じます。

 

これがいわゆるぎっくり腰や急性の腱鞘炎などとして現れます。

 

さらに慢性疼痛に移行した場合の回復は,

急性期での対処と比べて何倍もの時間と労力が必要になります。

 

痛まないように工夫することの意義

痛みをガマンして続けることに代わるアプローチは,

痛まないように工夫しながら続けることです。

 

この工夫には以下の意味があります。

 

侵害受容器への刺激を最小化するという意味があります。

 

椅子の高さを変える、

クッションを使う、

作業角度を変える

 

といった工夫は侵害受容器への機械的刺激を軽減します。

これにより痛みのシグナル自体を減らすことができます。

 

中枢性感作の予防という意味もあります。

繰り返しの侵害刺激を与えないことで脊髄後角の過敏化を防ぎます。

早期に工夫することが慢性疼痛への移行を予防する最も重要なアプローチです。

 

体の自然治癒力を活かすという意味もあります。

痛みという信号が示す組織への過度な負担を取り除くことで,

体本来の修復機能が働きやすくなります。

 

具体的な工夫の実践

工夫はどんなに小さくても構いません。

 

デスクワークでは椅子の高さを変える、

クッションを腰部に入れる、

30分に一度立ち上がる

 

という工夫ができます。

 

立ち仕事では,

 

足元に5〜20センチの台を置いて片足を乗せる、

作業台の高さを腰の角度が20度以内になるよう調整する

 

という工夫ができます。

 

日常動作では重いものを持つときは体に近づけて持つ、

前かがみになるときは膝を曲げて腰を落とすという工夫ができます。

 

痛みのサインを工夫のヒントとして活用することで,

体への負担を軽減しながら必要な作業を継続できます。

 

まとめ

痛みは侵害受容器の活性化から脊髄後角を経由して脳に伝わる体の重要な警告シグナルであり組織に問題が生じていることを知らせるメッセージである。

 

痛みを無視して同じ刺激を繰り返し与え続けるとNMDA受容体の活性化・ウインドアップ現象・グリア細胞の活性化を通じた中枢性感作が生じて慢性疼痛へと移行するリスクが高まる。

 

慢性疼痛に移行した場合の回復は急性期での対処と比べて何倍もの時間と労力が必要になる。

 

痛みをガマンして続けることに代わるアプローチは痛まないように工夫しながら続けることであり侵害受容器への刺激最小化・中枢性感作の予防・自然治癒力の活用という生理学的な意義を持つ。

 

体からの「ダメよ」というサインに気づいた今日が変えるチャンスです。

 

鹿児島の整体おんおんどう
理学療法士 迫田徳昭
施術歴37年・施術実績25万回
鹿児島市小野3-2-7
10:00〜20:00(日祝OK・完全予約制)

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