【#102健康の格言】冷シップは患部を冷やすものではない

#102冷シップは患部を冷やすものではない

湿布を何年使っても治らない方への一つの質問

 

最後に湿布を貼らずに過ごした日はいつですか。

すぐに思い出せない方は、湿布への依存が体の回復を妨げている可能性があります。

慢性的な痛みを抱えながら何年も湿布だけで対処してきた方の多くが、根本的な改善に至らないまま症状を繰り返しています。

 

冷湿布の薬理作用と冷却効果の誤解

 

冷湿布の正式名称は冷感ハップ剤です。この名称が示す通り、冷湿布は実際に患部の温度を下げているわけではありません。

 

冷湿布にはメントールやハッカ油などの成分が含まれています。

これらの成分は皮膚にあるTRPM8と呼ばれる冷受容体を刺激します。

TRPM8は本来低温を感知するための受容体ですが、メントールなどの化学物質によっても活性化されることがわかっています。

 

つまり冷湿布の「ひんやり感」は実際の温度変化ではなく、化学受容体への刺激によって脳が「冷たい」と錯覚している状態です。

皮膚表面の実測温度はほとんど変化していないことが温度測定の研究でも示されています。

本当に患部を冷却して炎症を抑えたい場合は、氷のうやアイスパックなど実際に熱を奪う物理的な冷却方法が必要です。

 

温湿布の薬理作用と温熱効果の誤解

温湿布にはトウガラシに含まれるカプサイシンなどの成分が配合されています。

カプサイシンはTRPV1という温受容体を刺激することで「温かい」という感覚を引き起こします。

しかしこれも冷湿布と同様の原理であり、実際に皮膚の深部組織の温度を上昇させているわけではありません。

皮膚表面の感覚受容体への化学的刺激による感覚です。

 

筋肉や関節の深部まで温めて血流を改善したい場合は、入浴や温熱パックなど実際に熱エネルギーを伝導させる方法が必要です。

 

湿布の消炎鎮痛成分の作用機序

 

湿布には冷感や温感をもたらす成分とは別に、消炎鎮痛成分が配合されています。

代表的な成分としてサリチル酸メチル、インドメタシン、フェルビナクなどがあります。

 

これらの成分はシクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素の働きを阻害します。

COXはプロスタグランジンという炎症や痛みを引き起こす物質を生成する酵素です。

COXの働きが阻害されることでプロスタグランジンの産生が減少し、炎症反応と痛みの感覚が一時的に軽減されます。

 

この作用は急性の炎症や軽度の痛みに対しては一定の効果があります。しかし重要な点は、この作用は痛みの「シグナル」を抑制しているだけであり、痛みの「原因」そのものには影響を与えていないということです。

 

痛みのシグナルと原因の違い

 

痛みは体にとって重要な警告システムです。

侵害受容器という痛みを感知するセンサーが組織の異常を検知し、その情報を脊髄を通じて脳に伝達します。

 

慢性的な肩こりや腰痛の多くは、筋肉の持続的な緊張、血流障害、骨格の歪みといった構造的・機能的な問題が根本原因になっています。

これらの問題が侵害受容器を刺激し続けることで痛みのシグナルが発生し続けます。

 

湿布の消炎鎮痛成分はこのシグナル伝達経路の一部(プロスタグランジンの産生)を一時的に抑制しますが、根本原因である筋肉の緊張や骨格の歪みには何の作用も及ぼしません。

 

これは火災報知器が作動しているときにアラームの電源を切る行為に類似しています。

警告音(痛みのシグナル)は止まりますが、火災(根本原因)そのものは進行し続けています。

 

慢性痛における中枢性感作との関係

 

根本原因が解決されないまま痛みのシグナルだけが繰り返し抑制・再発する状態が長期間続くと、脊髄後角における中枢性感作という現象が生じることがあります。

 

中枢性感作とは、痛みを処理する神経経路が過敏になり、本来であれば痛みとして感知されないような弱い刺激にも痛みを感じるようになる状態です。

これが慢性疼痛の維持・悪化に関与していることが痛み研究の分野で明らかになっています。

 

つまり根本原因を解決せずに痛みのシグナルだけを繰り返し抑制し続けることは、長期的には痛みをより感知しやすい体の状態を作り出すリスクがあるということです。

 

根本原因へのアプローチの重要性

 

慢性的な痛みから回復するためには、痛みのシグナルを一時的に抑える対症療法だけでなく、根本原因にアプローチすることが不可欠です。

 

当院では筋肉の表面的な緊張だけでなく、お腹の深部にある腸腰筋などの深部筋の状態を含めて全身の歪みのパターンを評価しています。

腸腰筋の緊張は骨盤の歪みを引き起こし、それが背中側の様々な不調の原因になっているケースが少なくありません。

 

表面的な痛みの場所だけを見るのではなく、その痛みを引き起こしている構造的な原因を特定して整えることが、湿布だけでは到達できない根本的な改善への道筋です。

 

まとめ

冷湿布はメントールによる冷受容体への化学的刺激であり、実際に患部の温度を下げているわけではない。

温湿布はカプサイシンによる温受容体への化学的刺激であり、実際に深部組織を温めているわけではない。

湿布の消炎鎮痛成分はプロスタグランジンの産生を抑制して痛みのシグナルを一時的に軽減するが、根本原因には作用しない。

根本原因が解決されないまま痛みのシグナルだけを抑制し続けることは中枢性感作のリスクを高める可能性がある。

慢性的な痛みの改善には、筋肉の緊張や骨格の歪みといった根本原因へのアプローチが不可欠である。

何年湿布を使い続けていますか。一度根本原因を確認してみることをお勧めします。

 

鹿児島の整体おんおんどう
理学療法士 迫田徳昭
施術歴37年・施術実績25万回
鹿児島市小野3-2-7
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